2008年4月21日月曜日

日下公人「人事破壊」

個人的評価:★★★★☆

1994年初版。94年当時、バブルが崩壊した日本にあって、この洞察力は見事だと思う。リストラや成果主義人事がはびこることはもちろん予想されていましたが、デフレ経済が最低10年続くという予想も、不気味なほど現実と一致しています。日下さんの洞察力と意外な発言にはいつもハッとさせられます。

この本で個人的に最も印象的だったのが、(当時)アメリカ型のドライな人事制度も、日本型の家族的終身雇用人事も、結局のところは循環しており、どちらが良いというわけではない。ドライな人事制度が長く続けばそれが嫌になって家族的になるし、終身雇用も長く続けば弊害が大きくなってリストラや成果主義のようなドライな人事が流行る。重要なのは両者が常に入れ替わることで、変化が生じ続けるということ。人間は変化を好む生き物であって、ミニスカートも、ロングスカートもどちらも美しく、他方へ移るときに人は魅力を感じるのだ、という主張。

相当な知識と豊富な経験がなければ、さらっとこんな主張はできません。

実際のところこの人事制度の大きな循環は、景気循環とも大きく関連しているとも読み取れますし、実際そうだと思います。

一方で、94年当時ですから、その後起こるデフレ経済に対する対処が長々と述べられており、それはそれで楽しいのですが、ややドライすぎるところもあってちょっと疲れるのでその点☆ひとつ減らしています。

それ以外は、非常に的確な指摘と洞察がふんだんに盛り込まれていると思うので、おススメです。ただしこの本自体は10年以上前に書かれたものであるということをお忘れなく…

人事破壊―その後10年そして今から人事破壊―その後10年そして今から
日下 公人

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